教えて!青山せんせい 思春期女子と母親のベストな距離感 編
2025.08.23

りびえーる本紙でも大きな反響をいただいている子育て応援企画「教えて!青山せんせい」のWEB版。
就学前から10代後半までの子どもたちを持つ親&祖父母へ向けて、毎回さまざまなテーマをお届け。どの世代へ向けたお話も、どこかで必ずあなたのお子さん・お孫さんにつながるのが不思議です。
子どもも親も祖父母も幸せになる…子育てを楽しんじゃうヒントを、この連載で見つけてください!
教えて!青山せんせい 思春期女子と母親のベストな距離感 編
友達との関係性、オシャレや “推し活”…思春期女子を見ていると、親の心配はつきないもの。
特に同性である母親は、注意して反発されるとイライラしてしまい、冷静になれないことも。
ときには「ねたみ」や「嫌悪感」に近い感情を自覚して、自己嫌悪…なんてことはないですか?
好評だった前回の「思春期男子」に続き、今回は複雑でデリケートな思春期女子との関係性について考えます。
それでは今回も…教えて!青山せんせい!
母親と思春期女子…同性同士ならではの心理
思春期の子どもは、男子も女子もそれぞれ異なる課題を抱えながら成長していきます。
その中でも特に複雑でデリケートなのが、思春期女子と母親の関係です。
最近 YouTubeのコメント欄やメルマガの感想欄に、「思春期女子と母親の関係性」についての質問が寄せられました。
気になったのが、母親が娘に対して「ねたみ」「嫌悪感」などの感情を抱くという内容です。

確かにあります。
子どもが男子の場合は、母親が「小さいころのかわいいわが子」に執着すると摩擦が増えやすい。
女子の場合はそれに加え、母親が「女性としての自分」と娘を重ねやすいため、ねたみ・拒否・支配が生じやすい側面があります。
思春期女子の子育ての一場面に、なぜ「ねたみ」といった感情が生まれるのか、このことについて考えてみます。
「否定的感情」の複雑な背景を理解しよう
思春期の娘の成長を前にして、母親が無意識にねたみや拒否に近い感情を抱くことがあります。
「母親なのに、なぜそんな気持ちになるのか」と自分を責めてしまう方も少なくありません。
けれどもこれは単なる個人の問題ではなく、複数の要因が絡み合って生まれる自然な心理現象だといえるのです。
娘は母親にとって、いつまでも小さくかわいい存在であってほしいものです。
しかし思春期を迎えると、身体的・精神的な成熟が目に見えて進みます。
母親はその姿に、自分の若さの終わりや、子育ての役割が終わっていくことを突きつけられるような感覚を覚えがちです。
娘が自立して母親から離れていく寂しさ、
自分の役割が薄れていき戸惑う喪失感。
自分が若いころにできなかった経験や、満たされなかった願いを娘が実現しようとする姿に刺激を受け、ねたむ気持ちになる。
この複雑な感情が、「そんな格好はまだ早い」「子どもらしくしていなさい」といった、娘の自己表現を否定する言動につながることがあります。
母親が娘に対して強く反応してしまう背景には、自分の過去の経験や価値観も影響しています。

母親の世代では、「真面目さ」や「控えめであること」が美徳とされました。
そのため、現代の女の子たちが自由に自己表現をする姿に戸惑い、無意識に自分の価値観を押しつけてしまうと、「母 対 娘」という世代間の価値観の衝突が起こります。
母親自身が容姿や女性としての役割に自信を持てないとき、娘の輝きを素直に喜べないことがあります。
これには、「女性はこうあるべき」という社会的な期待や、親からのしつけによって培われた心のクセが影響しています。
もともと低かった自己肯定感が揺らいでしまうケースもあるでしょう。
子育てとは親の育ちなおし と私はよく言いますが、特に同性である娘の思春期は、母親にとって自分の思春期を追体験する時期になるのかもしれません。
過去に我慢させられた記憶や理解されなかった思いが、娘を通して再燃するのです。
自分の感情を受け止め、娘とベストな距離感を
母親からの否定や過干渉は、娘の自己肯定感に直接影響を及ぼします。
「女性としての自分は価値がないのでは」と思い込み、自分の魅力を表現できなくなることがあります。
逆に、強く反発して過激な行動に走ったり、母親の価値観に縛られて本来の自分を出せなくなることもあります。
思春期女子にとって、母親は「最も近い存在であり、最も距離をとりたくなる存在」。
その微妙な距離感をどう扱うかが、親子関係の行方を左右します。
では、母親はこの「ねたみ」や「複雑な感情」とどう向き合えばよいのでしょうか。
1. 自分の感情を振り返る
娘の言動に強い反応を示したとき、「なぜこんな気持ちになるのだろう」と問い直してみること。多くの場合、それは娘の行動そのものよりも、自分の過去や未解決の感情に由来しています。
2.娘とのコミュニケーションを見直す
娘のおしゃれや関心事を否定せず、「そうなんだね」「かわいいね」と一度受け止めることが大切です。 価値観が違っても、共感の姿勢が関係を支えます。
3. 自分の気持ちを正直に伝える
「お母さんは子どものころにこんな経験があって、だから少し複雑な気持ちになる」と打ち明けてみる。 背景を知ることで、娘は母の言動を理解しやすくなり、お互いの関係がより深まります。
4. 専門家の力を借りる
過去のトラウマが深く影響している場合は、カウンセリングなどを通じて親自身が心の整理をしていくことも有効です。
思春期女子と母親の関係は、親子だけでなく「女性同士」という特別な要素が重なり合うため、とても複雑です。
母親が自分自身の過去や感情と向き合い、娘を一人の女性として受け止めることができたとき、初めて本当の意味で「成長を喜べる」関係が築けるのではないでしょうか。
娘の成長を支えることは、同時に母親自身の心を解放するプロセスでもあります。
思春期は、親子双方にとって大きな学びと成長のチャンスなのです。

「しあわせなおかあさん塾」青山節美さん(松江市)
親学ファシリテーターとして4,000人以上のお母さんたちと接する中で、「親が変われば子どもの未来は変わる」を理念に2018年同塾を開講、講座動員数は現在延べ1万人以上。
登録者数4.33万人(2025年6月末現在)を数えるYouTubeチャンネル「未来へつながるしあわせな子育て塾」でも迷える親たちへ具体的なヒントとエールを送り続けている。