屋久島のシンボルツリー
“縄文杉”に出会う旅
気づけばこの連載も第10回を迎えました。こうして長く書かせていただけていること、そして毎回楽しみに読んでくださる皆さまに、心から感謝申し上げます。節目となる今回は、屋久島を語るうえで欠かせない「縄文杉トレッキング」についてのお話です。
縄文杉トレッキングといえば「朝が早い」「長時間歩く」というイメージをよく耳にしますが、その通り、スタートは夜明け前の4時過ぎ。屋久杉自然館からシャトルバスに乗り、くねくねとした山道を約40分かけて登ると、出発地点の荒川登山口に到着します。
往復約22km、約10時間に及ぶ長い道のりがいよいよ始まります。最初の8.5kmは、かつて木材を運ぶために使われていたトロッコ道を歩きます。森が少しずつ明るくなり、鳥のさえずりが響き出す様子はとても神秘的で、自分も自然の一部になったような気持ちになります。
どこまでも続いているような気持ちになる “トロッコ道”
途中には大きな橋がいくつもあり、谷間に転がる巨石の迫力と、そこから見下ろす景色はまさに絶景。1時間ほど歩くと小杉谷集落跡に着き、かつて人々が暮らしていた名残を静かに感じることができます。
トロッコ道の終点を過ぎると、いよいよ登山道へ。岩や木の根が張り巡らされた道を進んでいくと、現在は倒木によって株元だけが残る「翁(おきな)杉」が見えてきます。ここから先の登山道は木道階段が整備されているので安心です。途中には、推定樹齢3,000年の巨大な切り株「ウィルソン株」があり、中から空を見上げるとハート形に見えることで有名。写真スポットとしても人気があります。ちなみに、このコラムの見出し画像は、ウィルソン株の前で撮ったものです。ここから先は、急な階段が続くので、心が折れないように一歩ずつ進んでいきます。
「ウィルソン株」切り株に入って右隅から見上げると、きれいなハート形に見えます
さらに「大王杉」や「夫婦杉」を過ぎると、そこからは『世界遺産エリア』。森の空気が一段と澄んでいくのを感じます。そして、最後の階段を登り切った先に、ついに「縄文杉」が姿を現します。

屋久島の森の王「縄文杉」圧倒的な存在感です
樹齢およそ7,200年ともいわれる日本最古の屋久杉。近づくことはできませんが、遠くからでも圧倒的な存在感を放ち、長い年月をこの地で生き抜いてきた力強さと穏やかな佇(たたず)まいに、思わず息をのみます。
体力的には決して楽ではありませんが、屋久島の大自然と向き合いながら歩く時間は、心を静かに整えてくれる特別な体験です。ぜひ一度、縄文杉に会いに行ってみてください。

三島佳奈
松江市浜乃木のライフスタイルショッブ「志庵」オーナー。「心と体に佳いものを」をコンセプトに、2年間暮らした屋久島の食品や工芸品などのほか、日々の暮らしに寄り添う洋服と雑貨を扱う。
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