【りびえーるも展示!】マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア ご本人による見どころ紹介と再インタビュー
2025.10.23
平田本陣記念館(出雲市平田町)で開幕した、松江市出身のイラストレーター・マツオヒロミさんの展覧会。
2018年に同館で開かれた「百花繚乱 マツオヒロミ展」に続く2度目の郷土開催、会期は2026年1月25日まで続きます。
「前回に続き、地元で展覧会を開けることを光栄に思います。この間に『マガジンロンド』をはじめ、さまざまな作品を生み出すことができました。前回来場の人も、今回初めての人も楽しめるような内容になっていると思います」(マツオヒロミさん)
りびえーるではマツオさんのイラストで、2023年5月27日発行の出雲版600号発行記念別刷特別号、ならびに翌5月28日発行の創刊600号の表紙を飾り、この2冊も本展で展示されています。
公開初日イベントのため同館を訪れたマツオさんに、作品の制作秘話や「りびえーる」への印象なども伺いました!
マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア について
2024年に東京・弥生美術館で開催された同名展覧会からの巡回展。
本展までの間に描き下ろされた作品など10点以上を追加し、より充実した内容に。


エントランスではフォトスポットにもなる迫力のパネルやタペストリーが出迎えるほか、愛してやまないという同人誌(作家自身が全ページ企画から完成まで監修する個人制作書籍)が、手に取って読めるようになっています。
この「自身で全てを制作する」楽しみが、書籍のすみずみまで自身の美学をいかして作り上げる、マツオ作品のルーツ。



展示室ではデジタル原画や直筆による下絵スケッチをふんだんに紹介。
『百貨店ワルツ』コーナーでは、マツオ作品をイメージソースにしたパンプスや、作品舞台となる架空のデパート「三紅百貨店」の包装など実物の展示もあり、その世界観に没頭できます。
「『百貨店ワルツ』展示は書籍と同様、タペストリーで表現したエントランスに始まり、呉服部や美粧部といったフロアごとに分かれているので、一回りすると架空の百貨店を丸ごと実体験したかのような仕掛けになっています」(マツオさん)



『マガジンロンド』のコーナーでは、“創刊100周年”という設定の架空の雑誌「ロンド」が実際の書籍としてリアルに再現されています。
時代ごとに版型や綴(と)じ方、タイトルフォントを変えた冊子がずらりと並ぶ様は圧巻!


創作過程がうかがえる貴重な直筆原稿や、書籍装画・ポスターなどを含め、およそ150点の作品が会場を飾ります。
中にはアーティスト・藤井風さんの公式グッズに使用され、話題になった作品も。

今回の展覧会ポスターイラストは、最新刊となる、2016年に制作された書籍の新装版『[新版]エキゾチカ』の表紙に使用された「秘密2」で、展覧会への出品は初。
前回の「百花繚乱展」ポスターに使用された「秘密」の続編的位置づけになっており、モデルが同じ着物を着用している点にも注目して!


グッズコーナーには作品集や装画を手掛けた書籍をはじめ、美麗なオリジナルグッズもボリュームたっぷりにそろいます♪
マツオヒロミさんに再・インタビュー!
島根で生まれ育ったことが作品に反映されている点は?
湿度でしょうか。しっとりとした、どこかに翳(かげ)りのある作風は、生まれ育った土地柄が出ている部分。
でも影があるからこそ、光が華やかになるように思います。
また、『マガジンロンド』作中に出てくるマンガに、地方に暮らす高校1年生の女の子たちが「田舎にはオシャレなものがない」とこぼすシーンがありますが、それは中学3年生当時の私の気持ちを反映したもの。
“地方の百貨店”という舞台設定についても、大阪や神戸の大丸を参考にした部分はありますが、東京のメインストリートにあるような百貨店とは違うな…と感じたからでした。

マツオヒロミさんご本人による作品解説を聞きながら…
マツオさんの作風や、展覧会副題でもある“レトロモダンファンタジア”とは?
言葉通りの“懐古”ではなく、古いものへのファンタジックな憧れや、ワクワクを表現しています。
具体的な時代でいうなら、大正や昭和初期が中心ということになるかも。
作品作りにおいて大事にしていることは
グッとくる、心を動かされる感覚を大事にしています。
描きながら「どうしよう」と悩んだときには、ワクワクするほうを選ぶようにしています。
自分がワクワクを感じている“純度”が高いと、熱い表現、心動かす表現ができるような気がします。
まず自分がワクワクすることが大事です。
マツオさんが描きたいのはどんな女性像?
「意思のある人間」として描こうとしています。
ある面、自分の分身のような部分もなくはないかもしれません。
男性が女性を描くと、どこか空想上のものになってしまうように思うのですが、私が描きたいのはもっと具体的なもの。悩んだり悲しみがあったり、こだわりを持っていたり…そういった“肉感”を表現したいです。
『マイ ガーランド』では、女性がまとうランジェリーをめぐって、“着る”とはどういうことなのかをつきつめました。女性にとってのエールの意味で制作していましたが、ジェンダー問題に厳しい昨今、肌を出す作品を描くことは自分にとっては大きな挑戦でした。

「りびえーる」からの表紙オファー、どのような気持ちでしたか?
地元にいたころよく読んでいた紙面なので、お声がけいただけてすごくうれしかったです。
最後までこだわって作ってくださったことに驚きましたし、とてもうれしく思いました。
一歩を踏み出すための勇気のために、マツオさんは何を大事にしていますか?
自分は絵が描きたいのに、大学進学という全く真逆の方向へ行ったことを大きな挫折と感じ、「このままじゃダメだ」と強く思いました。「どんなに苦しくても、どうせ描くことになるんだ。描かない人生のほうが私にはダメなんだ」と直感的に思ったことがバネになりました。
以前のインタビューでも話した「夢は羅針盤」は、今もその通りだと思っています。漫画家になりたくて、そこでコテンパンになり、イラストレーターに着地しましたが、結果としてマンガも作中に取り入れてイラストを描き続けています。
ワクワクする方へ、扉がありますよ。
だいぶ大きくなられた娘さんとは、今どんな関係でしょうか?
新しい扉を開いてくれる存在です。今流行っているものも、子どもを通して知ることができます。
私とは好きなものが真逆なので、新鮮でもあります。
彼女は爬虫(はちゅう)類が好きで、私はもともと苦手だったんですが、先日“蛇を巻く”という体験をしました。
今なら愛情をもって爬虫類を描けます(笑)!
創刊600号特別号・記念号連続表紙
イラストレーター・マツオヒロミさん ロングインタビューはこちらから
