生き物としての竹らしさを残したい

穏やかな鳥取県日野町の山あいに立つ、竹細工作家・真崎愛さんの工房を訪ねた。

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細い竹ひごで編まれた丸みのあるフォルムに心が和むかごや、太い竹ひごを縁に巻き付けた豪快な印象のかごなど、多彩な竹細工を生み出す真崎さんと竹細工との出合いは、勤務地だった群馬県。身近な素材での編み組みに興味を持っていたところ、群馬県ふるさと伝統工芸士の青木岳男さんの竹細工を見て「やってみたい」と思った。

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青木さんの工房へ見学に行ったその日、道具と材料を渡され「やらざるを得ない状況になった」と笑う。作品はもちろん、青木さんの制作しているさまや、鉈(なた)一本ででき、シンプルだが奥深いところに魅力を感じ、仕事の合間に青木さんの工房に通い学んでいた。が、本格的にやるなら別府市に学校があるとアドバイスされ、仕事を辞め大分県立竹工芸訓練センターへ。竹工芸を仕事にできるよう全般の指導を受けた。

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その後、由布市の庄内青竹細工の「自ら山で竹を切り出し、青いまま暮らしの中のものをつくるところに共感して」青竹細工も習い、2023年日野町で「生気(せいき)basketry-works」を立ち上げ、別府と由布で学んだ真崎さんならではの編み組みが始まった。

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真崎さんは極力、鉈だけでつくる。一本一本のひごにも景色(表情)があるのが理想で、きちんと測って全てがそろっているのでなく「揺れ」があることに魅力を感じている。

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しなり具合が異なるなど竹にも個性があり、「生き物だなと感じる」という。生き物だったことを感じてもらえるよう、竹の生気を失わず、竹の動きが残るものをつくる。「整え過ぎるときれいだけど生き物としての竹らしさが失われるように思う」ので、竹の個性を大切にして、整い過ぎない形を面白がる。

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材料の竹は、切りに行ける近所で節の長い太い真竹を探す。ツルや布など異素材と組み合わせる場合もあるが、それらも生活圏内でそろえる。「身近にある素材を使って、日野町で私ができる竹細工をしたい」と話す。

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青木さんが、「70年やっているが、まだまだひよっこ」と言われたことが忘れられない。「竹細工は道具も少なく、感覚の世界でゴールがない。その人の生きざまが表れる」と真崎さん。これから年を重ね感覚に磨きがかかり、どんな竹細工が生まれるのか、期待は大きい。

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プロフィール


まさき・あい 1994年生まれ。
2020年から大分県立竹工芸訓練センターで竹工芸全般を学び、その後同県由布市の庄内青竹細工で青竹細工を学ぶ。23年鳥取県日野町で「生気basketry-works」を立ち上げた。制作のほか、竹細工教室を毎月第1水曜と第1土曜日に開催し、自分でつくる楽しさを伝えている。
各種問い合わせはインスタグラム「@masaki_ai_sk」DMまたは電話:080-3998-9575へ。

purofi-ru 真崎さん