
夜の海からやってくる命のお話
〜屋久島とウミガメ〜
厳しい暑さが続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
屋久島の魅力を毎回お伝えしているこのコラム、まだまだ屋久島といえば「山」のイメージが強いかもしれません。確かに豊かな森と清らかな水、そして屋久杉に囲まれた風景は、何度見ても心を奪われます。
でも、実は海もとても魅力的なのです。今回はそんな海にまつわるお話です。屋久島の海は、特に5月から9月ごろにかけてが、高い確率でウミガメに出会える季節でもあります。海の中をまるで空を飛ぶかのように泳ぐウミガメと、初めて一緒に泳げたときは、とても感動しました。
日本は、世界でも有数のアカウミガメの産卵地であり、その中でも屋久島の北西部にある「永田浜」には、日本全体の30〜40%が上陸するといわれています。永田浜は、「前浜」「いなか浜」「四ツ瀬浜」という三つの浜の総称で、北太平洋最大のアカウミガメの産卵地で、2005年にはラムサール条約湿地にも登録されました。なかでもいなか浜は、約1kmにわたって白砂が続く美しい浜で、屋久島では数少ない貴重な砂浜です。
ポコポコとした跡が、ウミガメの上がってきた跡
5月の中旬ごろになると、その砂浜にポコポコと不思議な穴のような跡が現れはじめます。それが、ウミガメが砂浜に上がってきた痕跡だと知ったときは、本当に驚きました。 6月から7月にかけては産卵のピーク。夜のあいだに浜に上がってくるウミガメは砂浜に大きな穴を掘り、平均100個以上の卵を産み、場所がわからないように砂でカモフラージュして、また静かに海へと帰っていきます。

孵化したばかりの赤ちゃんガメ
7月の後半から9月にかけて、孵化(ふか)がはじまります。一度だけその瞬間に立ち会うことができましたが、子ガメたちが小さな体で砂の中から出てきて、懸命に海を目指して進んでいきます。何度も波に押し戻されながら、それでも前へ進んでいくその姿に、思わず胸が熱くなりました。
この時期、夜の永田浜ではウミガメを守るために立ち入りが制限されたり、卵の周りに保護柵が設置されたりします。もし産卵や孵化の様子を見たい場合は、期間限定で開催されている観察会に参加してみるのがおすすめです。保護監視員さんの案内のもと、神秘的な瞬間に出会えるかもしれません。
そして、シュノーケリングができる方には、海の中でウミガメに出会うのもおすすめです。ちなみに私はもともと泳げなかったのですが、「どうしても一緒に泳ぎたい!」という気持ちから、屋久島に来てから泳ぎの特訓をしたほどです。
海の中で出会える「幸せを運ぶ守り神」ウミガメ
屋久島は海にも、美しい自然の魅力がたくさん詰まっています。もし屋久島を訪れる機会があれば、ぜひ海のほうにも目を向けてみてくださいね。

三島佳奈
松江市浜乃木のライフスタイルショッブ「志庵」オーナー。「心と体に佳いものを」をコンセプトに、2年間暮らした屋久島の食品や工芸品などのほか、日々の暮らしに寄り添う洋服と雑貨を扱う。
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