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2025年9月29日、いよいよ放送がスタートした連続テレビ小説「ばけばけ」。

松江テルサ(松江市朝日町)で開催された初回パブリックビューイングには、主人公・松野トキ(髙石あかりさん)の父・松野司之介役の岡部たかしさんが登場し、約500人の観客が一体となって第1回の15分間を見守りました。

続くトークショーには小泉八雲の曾孫・小泉 凡さんも登壇し、ドラマ制作の舞台裏など貴重な話を披露。

終始会場を明るく楽しませてくださった、岡部さんのユーモアあふれるトークはまさに役柄そのままでした!

 

岡部たかしさん&小泉 凡さんトークショー

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舞台となる松江でのパブリックビューイングですが、初回の感想、改めてお聞かせください

岡部「この機会を用意してくれたスタッフの皆さん、こんなに集まってくれたお客さんに感激しています。ありがとうございます、役者冥利(みょうり)に尽きます。視聴者の皆さんにとって、初回がどんな印象だったのか気になるところ。主題歌やセット、照明による光の演出など、随分こだわって作ってくれていますので、まずはその世界感を楽しんでほしいです」

小泉「これからは毎朝、ドラマを見て笑顔や元気をもらってからスタートできます。僕は初回をあらかじめ見せてもらっていましたが、今後も松野家でいろんなことが起こりそう。楽しみにしていてほしいです」

岡部「主演の髙石あかりちゃんも本当に今日を楽しみにしてました。今どんな気持ちかな」

 

松江の印象はいかがですか?

岡部「松江は今回が初めてで、昨日はカサゴなどの刺身をいただきました。そうそう、シジミ汁…すぃずぃみずぃる(出雲なまりで)も食べました。僕は和歌山が地元なんですが、田園や川の風景に、田舎に帰ったような気持ちになりました。松江大橋や、作中に登場する花田旅館のモデルになった富田旅館の跡地なども歩きました。ヘルンはあのあたりに住んでたんだ、と思いながら」

小泉「八雲は松江大橋のあたりに住んでいた期間が長かったんです。松江は天気はあまりよくない日が多いですが、この地ならではの、夢の中にあるような穏やかな光に感動したようです」

 

今回もヒロインの父親役。出雲弁のセリフも注目ですね

岡部「(おれしかおらんのかな?と笑いを誘いつつ) 『虎に翼』に次いでの父親役ですが、作品も時代も違いますから、新たな気持ちで臨んでいます。出雲弁の『〇〇しちょります』は、〇〇に入る言葉によって滑舌が難しいときがあります。また『〇〇だけん』も、言い切りの強い口調になりがち。イントネーションも語尾を上げたくなりますが、出番前に共演者同士や方言指導の方に確認しながら演じています。『〇〇だけん』は方言ぽくて気に入っています。方言のシーンは、コミカルだったり感情的になるシーンでは難しいんじゃないかと思います。平坦に…を心がけていて、指導の方にも『標準に近い感じで』と言われています」

司会「チーフプロデューサーの橋爪國臣さんによると、松野家は武家なので、少し標準語に近いようにしているそうですよ」

小泉「あの程度の出雲弁なら、土地の人でなくてもみんなに理解できますね」

 

凡さんから見て、注目のポイントは

小泉「実際のセツは肝が据わった大胆さがあり、世間体に翻弄(ほんろう)されない人だったと思います。これからどんな風にトランスフォームしていくのか、それにハーンがどのように合わせていくのかが見どころ。これまでは八雲がテーマの作品というと八雲を中心に描いた作品が多かったですが、今作は視点が違うところも楽しみ。また、明治時代の街並み風景を通じて、全国の人に松江、島根に感心を持ってほしいです」

 

ばけばけ岡部横断幕

客席には横断幕やうちわを持ったファンも


脚本のふじきみつ彦さんと岡部さんは旧知の間柄だそうですね

岡部「20年ぐらい一緒に演劇を作っている仲間。ふじきさんは家族を愛する子煩悩な人で、朝の散歩などお子さんとの間で習慣にしていることがあって、大阪で打合せがあっても泊まらずに絶対帰るんです。僕も舞台の台本を書いたり演出したりしますが、彼は脚本家としての意見を言ってくれる。芝居が面白くなかったら、演出ではなく本(台本)の方を変える人。何度でも、しつこいくらい本を書き直してきます。第1回目は頭にろうそくを付けて登場するシーンに笑いが起きてましたが、ふじき君はうれしいんじゃないでしょうか。あのシーン難しかったんですよ、くぎを打つとき、左手とかどうしてたらいいのか(笑)」

小泉「あのシーンを撮影されてた日、大阪のスタジオで見てたんですよ。『うわあ、ここから始まるんだ』と思いましたね。ふじきさんのお母様は松江の出身で、子どもの頃の夏は毎年松江で過ごしていたとおっしゃっていました。やっぱり松江とご縁がある方なんだと親近感を持ちました」

司会「橋爪さんによると、岡部さんはふじき脚本を誰より体現できる俳優として欠かせない人。一番最初にキャスティングされたのが岡部さんなんですよね。信頼がうかがえます」

岡部「光でも影でもない部分に光を当てる朝ドラを書いてみたい、ということを言っていたと思うのですが、普通に生きていれば、そんなにドラマティックなことばかり起きないですよね。他愛ないことを話したり、うれしいことや悲しいことがあったり、その積み重ねである、僕らの日常とあまり変わらないことを書いていくんだと思います」

 

岡部さんから見て松野司之介とはどんな人物?

岡部「真剣に生きている人なんですよね。どこかでピュアなところがある。のちに出てくる堤真一さん演じる傳(でん)さん(トキの親戚で松江藩に名をはせる上級武士・雨清水傳)にはライバル意識を持っていて、なんとかトキにかっこいいところを見せようとしたり、でも抜けているところもあったり。自分と似ているところは…かわいらしいところじゃないでしょうか(笑)」

 

撮影中の共演者について

主演の2人からのVTRコメント≫

髙石あかりさん
「台本読みのときから読解力が高く、岡部さんを見てお芝居をつかんでいきました。司之介は何をやっても憎めない、岡部さんの人柄がにじみ出たキャラクター。ユーモアにあふれた人で、アドリブも多く、写らないところで笑わせようとしてくるんです(笑)」

トミー・バストウさん「すごく優しくて、セットに来ると一日ハッピーになる人。これから共演するシーンが増えるので、もっと岡部さんのことを分かりたいです」

岡部「髙石さんはほかの作品も見て上手いと思っていましたが、芝居を目の当たりにすると、すごく色気があるかと思ったら子どもっぽさもあって、どぎまぎ揺さぶられます。普段は自分の時間も大事にしていて、常にナチュラルですね」

小泉「いつお会いしても自然体な人ですね。前向きで明るくて、彼女がセツ役をやってくださることがうれしいです」

岡部「トミーさんとは共演シーンがだんだん増えてきて、探究心や研究心に驚かされています。わからないことや言葉があると『それどういう意味ですか?』と聞いてくる。『しいていえば』とか『てっきり』とか…次に会ったときは例文まで踏まえて使えるようになってる。真剣に勉強してるので、見習わなあかんなって思います」

小泉「勉強家ですよね。八雲は著作が30冊以上ありますが手紙の類などまでほとんど読んでいるんです。先日は自分も読んだことがないシンシナティ時代のものを『読みましたか?』と聞かれました(笑)」

岡部「阿佐ヶ谷姉妹も劇団の同期で30年来の古い友人。息の合った感じはクスッとしてしまいます。トキの子ども時代を演じている福地美晴さんも、明るく無邪気で楽しい子。初回で、しじみ汁がおいしくて『あーっ』っていうシーン、『武士の娘があーって言うな』ととがめられて口元を隠してもう一度『あーっ』と言いますが、あれは台本にはないお芝居でした。とにかく現場の雰囲気がいいです。小日向(文世)さんも全然アウトレイジじゃない(笑)。本当にあのまんまで、楽しく現場にいられます」

 

今後の展開、どんなところが見どころですか?

岡部「この家で育ったトキがどんな成長をとげていくか、今は狭い人間関係が大きく広がり、いろんな登場人物が出てきます。楽しみに見てくれたらと思います」

小泉「活躍した部分に光を当てられることが多い八雲やセツですが、“光でも影でもない部分”の言葉のとおり、そうではない部分を見られる楽しみがあります。いろんな人物がそれぞれがどんな風に“ばけ”ていくか、楽しみにしています」

 

 

トークショー後の岡部さんに聞きました!

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初回放送&トークショーが終了していかがでしたか?

トークショーでも来場者が質問などもしてくれて、本編の方が良かったから盛り上がってくれたのかなと思うとうれしいです。会場の様子を脚本のふじき君にも見せたかったくらい。彼は笑いにもこだわる人なので、僕もうれしかったです。

 

子役の福地さんとのシーンのエピソードを教えて!

ほんとに明るい子です。これから登場する、湖に入るシーンでは、寒かった日にがくがく震えながら撮影して、僕のほうが「寒い寒い」と言ってたくらいなんですが、泣き言も言わずに頑張ってました。すごくいい“親子のシーン”があるので、ぜひ注目してほしいです。二人で出店でまんじゅうやだんごを食べたりするシーンでは、僕が演出に書いてないのにほんとに食べたりしてるのにもちゃんとリアクションしてくれた。彼女はうどんが好きで、プレゼントしたらすごく喜んでくれました。

 

初めて役柄が決まった時の心境について

「虎に翼」でやったばっかりだったので、また父親役でいいんですか?と聞いたくらいですが、脚本が長年一緒にやっているふじき君だったので、一緒にぜひやってみたいと思いました。

ばけばけ岡部2

松江を舞台のドラマに出演するにあたり、周囲の反応は

「松江はきれいなところだよ」と評判を聞いていましたし、オープニングに使われているこちらで撮った写真も見せてもらって、行ってみたいなと思っていました。神社仏閣が多く、小日向さんなどは時間がなくても電車を乗り継いで出雲大社や月照寺に行ったと聞き、行きたいなと思ってます。

 

オープンマインドが話題になることも多い昨今…

けっこうすごいことですよね、あの時代に外国の人と結婚するというのは。僕らの若いころからもだいぶ周囲が変わってきて、周囲に外国の人がいることに慣れてはきました。今なら外国の人と交際するのはもっと普通に見られるのかなと思います。

 

零落(れいらく)していく中で衣装やセットも変化していきます

衣装やセットで自然と自分に役が入っていくので大事なアイテム。初回冒頭の白装束のシーンは、キャストも初顔合わせ以来で、ろうそくも頭に載っていたのですごく緊張しました。今日はその時の気持ちを思い出していました。

ばけばけ岡部1

舞台経験も長い岡部さん、今後出てくる八雲の怪談を演じるなら何をやりたい?

「耳なし芳一」は、俳優としてやってみたいと思いますね。体中にお経とかいろいろ書いたりして。


第1回目の放送では、ユーモアのにじむ丑(うし)の刻参りシーンはもちろん、お城を眺めながら去来する思いを背中で語る姿に、圧巻の演技力を見せてくださった岡部たかしさん。

イベント終了後のインタビューでは、司会者が質問を募るたびに冗談で場を和ませてくれ、すっかりファンになってしまった取材班でした♪