創る◇◆◇墨絵画家 信田 薙佳さん【兵庫県】
2026.06.22
「静けさ×生命観×気配」を表現
山陰中央新報社文化センター松江教室で出合い、心ひかれた一枚の墨絵。
やわらかそうな毛並みの猫の大きな瞳が見つめる先にはモンシロチョウ。緊張感漂う作品の作者は墨絵画家で、同教室の講師も務める信田薙佳さん。「生き物は勢いが大事。次にどう行動するかまで表現できたらと思う」と話す。

父は水墨画家、母は着物のデザインを手がけていた。両親亡きあと残された道具を使い、やってみたかった日本画を描き、「入選したら絵を続けよう」と公募展に応募。結果は入選。父が喜ぶだろうと水墨画の道へ。「でも色は使いたいので、自分の好きなやり方で」と笑う。「江戸時代の絵師が描くほれぼれするような線に近づけるように」、独学で試行錯誤が始まった。


信田さんは花鳥画を中心に墨と水で「静けさ×生命観×気配」を表現したり、墨と顔彩を使ったり、さまざまなタッチで描くが、どの作品も信田さんにしか描けないもの。両親から言われていた「自分にしかできないことをやりなさい」をかなえた。



作品のアピールポイントを一気に一筆で描くとスピード感が出て、鑑賞者もそのスピードを感じることができる。鑑賞者が想像できるように余白を生かし、絵になったときに鑑賞者がどう感じるかを念頭に筆を運ぶ。

「水墨画は人生と重なるところがある」と話し、求めた形にならなかったり意図しないにじみ方をしたり、思い通りにいかなくても失敗ではなく、「そのままを受け入れ、そこからどう進めるかが難しくも面白いところ」。人生もまたしかり。

里山の生活にあこがれ、2012年から25年まで奥出雲町で暮らした信田さん。たたら製鉄で知られる地でもあり、ゆかりの場所を訪ね、理解を深めた。のちに金家来(かなやご)神社(宇部市)へのたたら製鉄奉納画を制作。「奥出雲町に住まなければ実現しなかったこと」と振り返る。




現在、独学で自身が苦労した「筆の扱い」「線」「どこから描き始めたらいいのか」などをブログで公開している。今後、より読みやすいように調整し、「いずれ書籍にして、水墨画の裾野を広げていけるものを残せるといいかなと思う」と、文化をつないでいく。水墨画・墨絵を学ぶ人、学びたい人へ「その時々の自分の線でいい。描きたいものがあれば描けばいい。基本は大事だが型にはまると面白くない。基本を学んでからは、自分の感性で描いてほしい」とアドバイスする。




プロフィール

のぶた・ちか 1961年生まれ。
2008年全国公募展入選をきっかけに画家を目指す。墨絵、水墨画を独学。花鳥画を中心に制作。国内外公募展入賞など多数。23年たたら製鉄奉納画制作(宇部市金家来神社)、26年1月中国天津武道場へ作品を寄贈。山陰中央新報社文化センター松江教室講師。ブログ「水墨画ナビ」継続中。
問い合わせはインスタグラム「@breath_of_sumi」へDMで。ストアカでも講座を開設。