もっと話そう! 認知症のコト vol.3
2025.09.16
もっと話そう! 認知症のコト vol.3
2040年、65歳以上の3人に1人は認知症か軽度認知障害(MCI)に?
9月21日は、国際アルツハイマー病協会(ADI)が世界保健機関(WHO)と共同で制定した世界アルツハイマーデー。
厚生労働省が2024年5月に発表したデータでは、2040年には認知症の人が584万人、MCIの人が612万人と推計。
国民の3人に1人程度が認知機能に関わる症状があることに。
認知症と共に生きていく時代、過度に恐れることなく適切なサポートにいち早くつなげるため、もっと認知症について話をしていきましょう!

お話を聞いたのは…
若年性認知症支援コーディネーター
三谷裕美子さん
松江市役所健康福祉部介護保険課
大藤恵理さん
松江市社会福祉協議会 松東地域包括支援センター
門脇真希子さん
まずは知りたい! 認知症の基礎知識
認知症の話題をこれまで以上によく聞きます
男女とも平均寿命が延び、生活習慣・食事内容の変化もあって、認知症と診断される人は増加傾向にあります。
認知症の前段階といえる軽度認知障害(MCI)や若年性認知症も知られるようになりました。
物忘れ外来など受診の窓口が広がったことも挙げられます。
認知症に気付くきっかけは?
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認知症にはさまざまな種類があり、脳内のどこに影響が出るかで症状が違ったり、いくつかの症状を併せ持つ「複合型」もあります。
特に患者さんの6~7割ともいわれる「アルツハイマー型」では物忘れが顕著。

認知症による物忘れは、夕食に「何を食べたか」ではなく、食べたかどうかを思い出せない点で、加齢によるものと異なります。
予定が覚えられなくなったり、料理に手間取るようになった、同じ話を繰り返す、事故など車のトラブルも早期発見のポイントです。
認知症の兆しが見えはじめたら…
「あれ?」と感じたとき先延ばしにしないことが大事。
軽度であれば薬もききやすく、適切なサポートを受けながら働き続けたり、これまで通り暮らしている人も多いので、不安になりすぎないで。

最近では、認知症になってからも一人ひとりできること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間とつながりながら、希望をもって自分らしく暮らし続けることができるという新しい認知症観が広がっています。
相談に踏み切る目安は?
「少しでも不安があれば」かかりつけ医や地域包括支援センター(呼称は自治体によって違うことがあります)への相談を。現状を把握して、何を利用するのが適しているかを一緒に検討します。
進行を緩やかにするためにも、地域との関係性が途切れないことが重要なので、自治会活動への参加などでつながりをつくっておくこともできます。
若年性認知症に関しては専用の窓口(若年性認知症相談支援センター)もあり、就労支援の相談もできるのが特長です。
本人が否定的な場合、どうしたらいい?
実際は本人も「おかしいな」と感じていることが多いのですが、現状を受け入れるには不安や葛藤があって当たり前。自信を失って自身の困り感から目をそらしていることも。普段通り接し、本人に寄り添った言葉かけをすることが、不安の解消と次の一歩に結びつきます。そのためにも家族だけでなく職場、地域の人と声をかけあえる関係をつくっておくといいですね。
相談員が関わって客観的になれることもあります。第一段階として本人を交えない相談も可能。少しずつ話し合える関係をつくっていきましょう。
気になります! 軽度認知障害(MCI)と若年性認知症
MCIと若年性認知症、どう違うの?
同じ認知機能低下を伴う症状でも、MCIは認知症の前段階とされ、軽度の認知機能低下があっても日常に支障がない状態。
若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症で、MCIから進行している場合もあります。
共通するのは、いずれも早期発見で、サポートを得ながら働き続けたり、変わらない生活を維持していきやすい点です。
治療しながら意欲的に情報発信している人も多く、そうした声が認知症にも配慮したユニバーサルデザインの開発などにも生かされています。認知機能の変化にかかわらず、社会貢献したい思いは変わらないんですよ。
「最近ちょっとおかしいかも?」と思ったら…
真っ先に異変に気付くのは、実は周囲より自分。下のチェックシートなども参考に、気になる場合は遠慮なく相談機関へ連絡を。
認知機能を維持するために、運動や食生活の改善、生活習慣病や難聴の予防・管理、社会参加などを組み合わせて継続することが有効とされています。

認知症予防…というと「何かしなければいけない?」とハードルが上がりますが、簡単に取り組めて自分が楽しいのが一番。いつも行かないスーパーで買い物してみる、普段着ない服を着ておしゃべりを楽しむ…ちょっとした挑戦や発見にワクワクすることが十分有効です。
特に「会話」は脳だけでなく、お口のフレイル予防にもなり一石二鳥。社会とつながり続けることが症状の進行を緩やかにすることは周知のとおりです。

認知機能に関するチェックリスト
初期にはもの忘れなどがほとんど目立たない場合があります。
チェックが多い場合や「いつもの自分と違う」と感じるときは相談機関へ連絡してみて。
★仕事や生活の場面での変化
□スケジュールの管理が適切にできない
□仕事でミスが目立つ
□複数の作業を同時並行で行えない
□段取りが悪くなり、作業効率が低下する
□取引先との書類を忘れるなど、もの忘れに起因するトラブルがある
□物を探していることが多くなる
□降りる駅・バス停を間違える
□服の組み合わせがおかしくなる
□家族との会話中、意味を間違えて険悪になる
□お金を無計画に使うようになる
★うつや体調不良と間違われやすい症状
□夜眠れない
□やる気が出ない
□自信がない
□運転が慎重になった
□趣味への関心が薄れた
□頭痛・耳鳴り・めまいがする
□イライラする
□考えがまとまらない
相談員から、りびえーる読者へ伝えたいこと
認知症は従来の「何もできなくなる」「支援される側」といったイメージから、共生していくものへシフトしつつあります。だからこそ、年齢を問わず誰もが正しい知識を持ち、先入観にとらわれず、自らも備えておくことが重要です。
「認知症の人とどう接したらいい?」と聞かれることもよくありますが、認知症についてよく知らないことも不安につながっているようです。垣根を作らず、肩を並べた付き合いがベスト。もし自分だったら…と、自分のこととして考えると、ヒントが見つかります。みんなでたくさん話をして理解し合い、「安心して認知症になれる」社会になるといいですね。
作品を通して認知症を理解する!
映画「オレンジ・ランプ」上映会開催
島根県では、認知症について多くの人に知ってもらう目的で、各市町村と連携して映画「オレンジ・ランプ」の無料上映会を認知症月間である9月限定で実施。県内各地で開催されるので、近くの会場にぜひ足を運んでみて!

【作品紹介・あらすじ】
39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんの実話をもとに描かれた、夫婦の希望と再生の物語。
妻・真央や2人の娘と暮らす39歳の只野晃一は、充実した日々を送るカーディーラーのトップ営業マンだが、顧客の名前を忘れるなどの異変が訪れる。下された診断は「若年性アルツハイマー型認知症」。不安に押しつぶされていく晃一は、とうとう退社も決意。心配のあまり何でもしてあげようとする真央。しかしある出会いがきっかけで二人の意識が変わる。「人生を諦めなくていい」と気づいた彼ら夫婦を取り巻く世界が変わっていく…。
監督/三原光尋 出演/貫地谷しほり、和田正人ほか
主人公モデル・丹野智文さん…自動車販売会社でセールスマンとして活躍していた39歳で、若年性アルツハイマー型認知症と診断される。診断後は事務職に異動、勤務を続けながら、不安を持っている当事者のためのもの忘れ総合相談窓口「おれんじドア」を地元の仲間とともに開設。自らの経験を語る講演活動にも力を入れ、「できることを奪わないでほしい」こと、「本人だからできることがある」ことを社会に発信している。
【上映スケジュール】
各地域の上映会実施予定は島根県ホームページでご確認ください。
「島根県 オレンジ・ランプ」で検索、またはこちらから

