生活の中で使いたいと
思ってもらえるものを

ある日、落ち着きのある優しい色の作品に出合い、気づけばささくれ立っていた心が穏やかになっていた。作者は「染めと織り 工房 葉和~はな~」として、糸紡ぎから織りまでを手掛けている染織家・ひろたにふじこさん。川沿いの木々に囲まれた工房を訪ねると、中央に機(はた)が2台、ほかに糸車、管巻、整経台、さらには植物採取のための道具までが並んでいた。

0421_創る メイン写真2

「木綿の手触りが好き」と、主に使用するのは綿だが、毛や絹のほか、和紙も糸にする。藍染め以外は、自身で採取してきた植物を使って染め、着尺や帯、ストール、テーブルセンターなどに仕上げる。

0421_創る メイン写真1

0421_創る コースター_紺縞

「自分で考えてものをつくる仕事をしたかった。染織家の志村ふくみさんの織りを見て、やってみたいなと思った」。20代半ば、安来織の遠藤小間野(こまの)さん(故人)に機織りの基礎を習い、その後少しずつは続けていたが、60歳になり残りの人生を思い、「趣味でなくプロとして、呉服屋さんに買ってもらえるような品を作れるようになりたい」と出雲織の青戸柚美江(ゆみえ)さんと秀則さんに師事し、2年間の研修期間を経て卒業。

0421_創る コースター_淡い2枚
0421_創る コースター_縞模様 茶・青

卒業後、染めもしたいと思い、「当分、染めに没頭して、原料を求めて山の中をうろうろしていたけど、山でなくても家の周辺にもいっぱいあることに気付いた」と笑う。初めて使う素材も「これは染まるなと分かるようになってきた」と話し、今回初というモミジバフウの実が出番を待っていた。同じ素材でも季節によって、媒染によっても染まる色が異なり、「どんな色が出るか楽しみ」。

0421_創る テーブルセンター

織りは、「生活の中で使えるもの」というのが魅力で、「皆さんが『使いたい』と思ってもらえるものをつくりたい」。これまで、島根県内だけでなく、倉敷や福岡など県外の染めや織りの作家らからも学んできた経験が、制作に生かされている。特に印象深く残っているのが、福岡の染織作家・中本扶佐子さんの「楽しく仕事しようね。小難しいことを考えながらやっていては、いいものはできない」の言葉。織りを始めたころは「何かつくらないといけない」という思いばかりだったが、「今は次々とアイデアが浮かび楽しい」と声が弾む。

0421_創る 水色の服
0421_創る 黄色い服

「以前染めた糸がしっとりいい色になってきている。作品にしなくっちゃ」とほほ笑み、日々の暮らしになじみながらも、そばで心を温めてくれるような作品を今後もつくり続ける。

0421_創る コースター_ストライプ2枚
0421_創る コースター_水色

0421_創る 棚

プロフィール

0421_プロフィール制作中

ひろたに・ふじこ 1949年生まれ。

20代の半ばに安来の遠藤小間野さんに機織りの基礎を習い、2012年3月から2年間、出雲織で研修。青戸柚美江さん・秀則さんから指導を受ける。その後、染めと織り工房を開き、糸紡ぎから織りまで一貫して手掛ける。着尺や帯、ストールなど幅広く制作し、絣(かすり)作品も。コースターなど、小物は島根県物産観光館でも販売。問い合わせは、ひろたにさん(電話:0852-23-6661)へ。