使う人を思い
より丁寧に

(うるし)の魅力を「木だけでなく、ガラスや陶、金属など、何にでも塗れる…空気以外は」と笑顔で語るのは、漆芸家の原えりかさん。長いストレートヘアを一つに束ねて制作する姿がりりしい。

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漆芸との出合いは高校1年のとき。島根県立美術館で開催されていた日本伝統工芸展で螺鈿(らでん)の作品を見て興味を持った。「青が好きで、螺鈿の貝の青がきれいだった。もともと細かな作業が好きだったことから、「細かな貝を貼っていく作業も自分に合っているのではと思った」という。高校卒業後、京都伝統工芸大学校の蒔絵(まきえ)専攻で4年間、漆工芸の蒔絵、螺鈿、高上(たかあ)げ、胎乾(たいかん)といった加飾(かしょく)の分野を主に学ぶ。その後、漆芸家として、山本漆器店(松江市)の工房を借りて八雲塗の漆器の絵付けやオリジナルの品を制作している。

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原さんは、「一つ一つ丁寧にすることを心がけている。やっていくうちにスピードもついてくるが、雑にならないようにし、『これでいい』ではなく使う人を思いながら制作する。

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量産品は無心で描くが、一点物の作品の絵を描いているときは心躍り「特に細かいところを描いているときが楽しい」と目を細める。下絵の線画はきちんと描くが、その他は厳密には決めず、制作しながら「ここは盛り上げよう」「ここはこの色にしよう」など、その時々の感覚を大切にして描き上げる。

R0216_創る・原えりかさん 写真6色

0216_創る・原えりかさん_ついたて

絵柄には季節を表現することが好きで、卒業制作の衝立(ついたて)のタイトルは、『ハルツカミ』。春をつかむ意味と春の神様という意味もある。卵の殻を細かくして貼り付ける卵殻(らんかく)技法も使った大作で、「大変だった」としみじみ。他の季節の作品をジョイントできるよう溝が付けてあるそうで、夏・秋・冬の完成が待ち遠しい。

夏がテーマの丸盆には出雲ナンキンのうろこや水面の波紋に、春の訪れをペンローズ・タイルのデザインで仕上げた香合に、緻密な螺鈿細工が施され目を奪われる。

0216_創る・原えりかさん_丸盆

0216_香合

2024年のさんびる文化センタープラバホールリニューアルの際、一部の座席プレートに椿(つばき)やウサギ、勾玉(まがたま)の絵付けをするなど活躍の場を広げているが、今後、「自分の作品も量産して販売していきたい」と話す。最新作は陶芸家とのコラボ作品で、持ちやすい大きな取っ手と丸い形、器の表面が熱くなりすぎないなど、使う人に配慮したカップ。伝統の技を用いながらも原さんの感性で、漆芸に新しい風が吹く。

0216_創る・原えりかさん カップ_花
0216_創る・原えりかさん 鯉

プロフィール

0216_創る・原えりかさん 作業風景

はら・えりか 1998年生まれ。
高校卒業後、京都伝統工芸大学校蒔絵専攻で4年間、漆工芸の加飾分野を主に学び、2023年卒業後、漆芸家として開業。山本漆器店の工房を借りて制作を続ける。24年のプラバホール改修の際に、一部の座席プレートへの絵付けを担当。
インスタグラム:@erika_urushi
問い合わせはメール「contact@erika-urushi.com」で。